Cloudflareと Supabase+Vercel、どちらを選ぶべきか

CloudflareとSupabase+Vercelを天秤にかける3Dイラスト ツール

小規模でコストを抑えたいサービスならCloudflare、会員機能や権限管理が複雑なアプリなら開発速度優先でSupabase+Vercelを選ぶのが有利です。どちらも「サーバーを自分で管理しなくていい」という説明は同じでも、中身の得意分野は大きく異なります。本記事では、Cloudflare・Supabase・Vercel各社の公式一次情報にもとづいて、機能・料金・向いている規模を整理しました。読めば、自社のサービスがどちらの構成に向いているかを、料金の試算まで含めて判断できるようになります。

この記事の対象読者:新規Webサービスの技術基盤を選ぶ開発者・CTO、費用対効果を検討する事業責任者・個人開発者

比較する2つの選択肢と選定基準

CloudflareとSupabase+Vercelは、どちらも自前のサーバーを持たずにアプリを公開できる基盤ですが、成り立ちがまったく違います。Cloudflareは「部品」を自分で組み合わせる基盤で、Supabase+Vercelは「完成済みの土台」を使う基盤です。

Cloudflareには、実行環境のWorkers、公開先のPages、データベースのD1など、部品が別々に用意されています。必要な部品だけを選んで組み立てる代わりに、認証機能や高度なデータベース機能は自分で用意する必要があります。

一方でSupabase+Vercelは、Vercelが画面の公開とサーバー処理を、Supabaseがログイン機能とPostgreSQLをまとめて提供します。Postgresは高機能なリレーショナルデータベースです。会員登録・ログイン・行単位の権限管理まで、最初から一式そろっている状態で開発を始められます。

この違いから、比較の軸は次の4つになります。

  • 料金体系/使った分だけ課金される従量課金か、月額の基本料金があるか
  • データベースの種類/SQLite系(D1)か、フル機能のPostgreSQL(Supabase)か
  • 認証機能の有無/自分で実装するか、最初から用意されているか
  • 実行される場所/世界中の拠点に近い場所で動くか、特定のリージョンで動くか

この4軸を踏まえたうえで、次の比較表で全体像を先に押さえます。「無料枠」「料金体系」「向いている規模」を軸に比較する考え方は、エラー監視ツールの比較記事でも採用しており、この記事でも同じ軸で整理しています。

【比較表】Cloudflare と Supabase+Vercel

表から読み取れる結論は、Cloudflareは「安く速く動かす」こと、Supabase+Vercelは「早く安全に作る」ことに強みがあるという点です。

項目 Cloudflare Supabase + Vercel
提供形態 実行環境・DB・ストレージが別サービスの部品群 フロント公開(Vercel)とバックエンド一式(Supabase)の2社構成
データベース D1(SQLite互換) Supabase Postgres(フル機能のPostgreSQL)
認証機能 標準では無し(自前実装が必要) Supabase Authが標準提供(パスワード・OAuth・SSO等)
無料枠 Workers:10万リクエスト/日ほか各サービス個別に設定 Supabase:月間アクティブユーザー5万人まで無料
有料プランの起点 月額5ドルから(超過分は従量課金) Supabase月額25ドル+Vercel月額20ドルが目安
実行の速さ 世界中の拠点でリクエストに近い場所で実行 Vercel Functionsは特定リージョン中心
弱点 Node.js互換に一部制約があり、認証・DBの機能を自前で組み立てる必要がある 利用が増えると月額の合計が上がりやすい
向いている規模 静的サイト・軽量API・画像配信中心のサービス 会員機能・権限管理が複雑なサービス

Cloudflareの特徴

Cloudflareの最大の強みは、アクセスしてきた利用者から地理的に近い拠点でそのまま処理が実行される点です。中核となるのがWorkersという実行環境で、世界中に分散した拠点でコードを動かすことで、応答までの時間を短縮できます。

世界地図上の複数拠点でリクエストを処理するCloudflareのエッジ構成イメージ
図: Cloudflareは利用者から地理的に近い拠点でそのまま処理を実行します

Workersを軸に、次の部品を組み合わせて使います。

  • Pages/サイトの公開先。無料プランでも月500回までデプロイできます
  • D1/SQLite互換のデータベース。行の読み書き件数に応じて課金されます
  • R2/画像や動画を保存するストレージ。データを取り出す際の転送料金がかかりません
  • Durable Objects/チャットやゲームのように状態を保持し続ける処理を扱う仕組みです
  • KV/単純なキーと値のペアを高速に読み書きするための保存領域です

料金は無料プランと、月額5ドルからのPaidプランに分かれます。Paidプランの月額5ドルには、Workersのリクエスト数(月間1,000万回)とCPU使用時間(月間3,000万ミリ秒)が含まれています。D1・KV・Durable Objectsにも、それぞれ月間の無料枠が別途用意されています。含有量を超えた分だけ従量課金される仕組みです。例えば月間1,500万リクエスト・平均CPU時間7ミリ秒というケースで試算すると、合計は月額8ドルほどにおさまります。一方で月間1億リクエストまで増えるケースを試算すると、合計は月額45.40ドルほどになります。

制約として押さえておきたいのが、Node.js互換の範囲です。CloudflareはNode.js互換のAPIを2026年8月からデフォルトで有効にしました。ただしTLS通信を扱うモジュールなど、一部の機能は未対応のまま残っています。既存のNode.jsアプリをそのまま持ち込める前提では設計しない方が安全です。

Supabase + Vercelの特徴

Supabase + Vercelの最大の強みは、会員登録・ログイン・権限管理まで含めて最初から一式そろっている点です。要件が固まりきっていない段階でも短期間で形にできます。フロントエンド公開とバックエンド機能を2つのサービスで分担する構成です。

画面公開を担うVercelと認証・データ管理を担うSupabaseの役割分担を示す図解
図: Vercelが画面公開、Supabaseが認証とデータ管理を分担します

Supabaseが提供する主な機能は次のとおりです。

  • Postgres Database/フル機能のPostgreSQLデータベース。行単位のアクセス制御(RLS)で「自分の投稿だけ編集できる」といった権限を細かく設定できます
  • Auth/パスワード・マジックリンク・ワンタイムパスワードに加え、Google・GitHubなど多数のソーシャルログインに対応しています
  • Realtime/データベースの変更をリアルタイムに配信する機能で、チャットや通知に使えます
  • Storage/ファイル保存機能。データベースの権限設定とそのまま連携します
  • Edge Functions/Denoランタイムで動くサーバーサイド関数です

Vercelは画面の公開に加えて、Vercel Functionsというサーバー処理を実行できます。実行時間の上限はデフォルト300秒で、有料プランでは最大800秒まで延長できます。課金の仕組みは2つの要素の組み合わせです。コードが動いている時間(Active CPU)と、インスタンスが確保されている時間(Provisioned Memory)で決まり、待機時間には課金されません。自動デプロイの運用面はVibe Coder向けCI/CD入門で詳しく解説しています。

料金はSupabaseが無料プランと月額25ドルからのProプラン、Vercelが無料のHobbyプランと月額20ドルからのProプランに分かれます。無料プランは個人開発の検証用途では十分な枠がありますが、Supabaseの無料プロジェクトは1週間操作がないと自動的に一時停止する点に注意が必要です。

料金体系の違いを数字で比較

本番運用を前提にすると、Cloudflareは月額5ドルから段階的に上がり、Supabase+Vercelは月額45ドル前後がスタートラインになります。ただしCloudflareもアクセスが増えれば、Supabase+Vercelの水準に近づく、あるいは超えることもあります。

Supabase Proは月額25ドルで、Webサービス運用に必要な機能一式が含まれます。データベースを動かし続ける「コンピュートインスタンス」利用分として、月額10ドル分のクレジットも含まれています。これを使い切る最小構成(Microインスタンス)であれば、追加費用なしで月額25ドルにおさまります。Vercel Proは月額20ドルの基本料金に、同額の利用クレジットが含まれる仕組みです。両者を合わせると、実質的な最低ラインは月額45ドル前後になります。

Cloudflareは逆に、月額5ドルの基本料金からのスタートです。この5ドルにWorkers・Pages・D1・KV・Durable Objectsの一定量の利用が含まれます。含有量を超えた分は、リクエスト数が追加100万回ごとに0.30ドル、CPU使用時間が追加100万ミリ秒ごとに0.02ドルという単価で加算されます。アクセスの少ないサービスであれば月額5ドルのまま運用でき、アクセスが増えるほど段階的に費用が上がります。

つまり、立ち上げ初期でアクセス数が読めないサービスほど、Cloudflareの従量課金が有利になります。機能が確定していて安定した規模で運用するサービスほど、Supabase+Vercelの定額に近い料金体系の方が計算しやすくなります。

【表】目的別の選び方

サービスの性質が決まれば、選ぶべき基盤もほぼ一意に決まります。次の表がそのまま判断の目安になります。

サービスの種類 推奨 理由
SNS・チャットアプリ Supabase+Vercel Realtimeでの通知配信とAuthでの権限管理が標準機能で揃う
マッチングアプリ Supabase+Vercel 「自分の情報だけ編集できる」「一致した相手だけ閲覧できる」といった行単位の権限をRLSで扱える
ECサイト 組み合わせ(商品画像はCloudflare、注文・在庫はSupabase) 画像配信はR2の転送無料が効き、注文処理の整合性はPostgresのトランザクションが安全
在庫管理・業務システム Supabase+Vercel 在庫数の整合性・承認フロー・帳票出力はPostgresの機能で扱いやすい
静的サイト・LP・軽量API Cloudflare 会員機能が不要なら、月額5ドルからの低コストと配信速度がそのまま活きる

【要注意】どちらか一方では収まらないケース

比較表だけを見て「安いからCloudflare」と単純に決めると、後から想定外の手間がかかることがあります。

1つ目は、既存のVercelアプリをそのままCloudflareへ移すケースです。CloudflareのNode.js互換は年々改善していますが、TLSモジュールなど未対応の機能が残っています。npmパッケージによっては動作しないものがあります。既存のNode.jsアプリを前提とした設計のまま移すのではなく、Cloudflareの実行環境に合わせて構成を見直す必要があります。

2つ目は、Vercel Functionsに常時接続のような処理を任せるケースです。Vercel Functionsは実行のたびに起動・終了する短命な処理を前提にしており、実行時間にも上限があります。チャットのような常時接続を必要とする処理には、状態を保持し続ける仕組みが要ります。Supabase RealtimeやCloudflare Durable Objectsと組み合わせる設計が必要です。

3つ目は、単一の基盤にすべてを預けるリスクです。クラウドサービスである以上、どのプロバイダを選んでも障害が起きる可能性はゼロではありません。単一プロバイダへの全面依存には一定のリスクが伴うため、重要な機能ほど、障害時の代替手段を事前に検討しておく方が安全です。

中小企業・スタートアップでの選び方

インフラを固定せず、Supabase+Vercelで素早く形にしてから、負荷が高い部分だけCloudflareへ寄せる進め方が妥当だと考えています。生成AIを組み込んだアプリ開発の現場では、最初に決めた要件が開発の途中で何度も変わることが珍しくないためです。仕様が変わるたびにインフラごと作り直すよりも、変更の影響を機能単位に閉じ込められる方が、手戻りのコストを抑えられます。会員機能や複雑な権限管理が必要なサービスほど、最初から自前で作り込むよりも、Supabase Authのような既製の仕組みに乗った方が開発期間を短縮できます。

実際、VercelはSupabaseを公式マーケットプレイスの連携先として提供しており、両者を組み合わせて使う構成はサービス提供側も想定した使い方です。画像配信や単純な公開ページなど、負荷が集中しやすい部分だけを後からCloudflareに切り出す、という段階的な移行も現実的な選択肢になります。

逆に、会員機能が不要な情報発信サイトや、単純なAPIをとにかく安く動かしたい場合は、最初からCloudflareを選ぶ方が無駄な固定費を抱えずに済みます。自社の要件を整理しきれていない場合は、外部の開発支援を受けながら構成を検討するのも選択肢の1つです。

なお、本記事で紹介した料金・無料枠は2026年9月時点の各社公式情報にもとづいています。料金プランは変更される可能性があるため、契約前には必ず公式サイトで最新の内容を確認してください。

まとめ

CloudflareとSupabase+Vercelは、どちらが優れているかではなく、何を優先するかで選ぶべき基盤が変わります。低コストと配信速度を優先するならCloudflare、会員機能や権限管理を含めた開発速度を優先するならSupabase+Vercelが第一候補です。まずは自社サービスに必要な機能を洗い出し、この記事の比較表と照らし合わせるところから始めてください。

参考リンク

監修者

池田 智彦

池田 智彦 | 株式会社Spovisor 代表取締役

NTTドコモ・KDDIで通信業界に21年従事し、グローバル/国内市場で10以上の新規事業の立ち上げと、1,000万ユーザー規模サービスの開発・運用を主導。事業戦略から海外展開、エンジニアリングまで横断する経験を活かし、2023年6月に株式会社Spovisorを設立。現在はAI・アプリ開発、生成AIコンサル、AI駆動開発支援、AI顧問など、企業のDXを実装まで伴走する支援に取り組む。

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