エラー監視、結局どれを選ぶべきか。6ツール比較と用途別おすすめ【Sentry vs PostHog vs GlitchTip 他】

エラー監視ツール6選を比較するアイキャッチ画像 ツール

一般的なWeb・SaaS開発ならSentryを選ぶ。プロダクト分析まで一体で欲しいならPostHog、コストとデータ主権を優先するならGlitchTipが軸になる。6ツールの公式料金ページと公式デモ動画を確認した結論だ。本番環境で発生したエラーに気づくのが、ユーザーからの問い合わせが先か、監視ツールの通知が先かで、対応のスピードは大きく変わる。無料枠の大きさだけで選んで、後からチーム全員が有料化に追われるケースも多い。この記事では無料枠・料金・強み弱みを一次情報にもとづいて整理し、用途別の選び方まで示す。

この記事の対象読者は3者。

  • エンジニア/自社サービスの運用・保守を担う方
  • CTO・エンジニアリングマネージャー/監視体制のコストを見直したい方
  • 情報システム担当/セルフホストでのデータ管理を検討する方

比較する6ツールと選定基準

エラー監視ツールは無料枠だけで選ぶと、チームやリクエスト数が増えた瞬間に費用が跳ね上がりやすい。今回はSentryを軸に主要5ツールを並べて比較した。

比較軸は次の5つに絞った。

  • 無料枠の上限/エラー件数・リプレイ件数・ユーザー数・保持期間
  • 最安有料プランの料金
  • 機能の強み/エラー解析・性能監視・リプレイなど
  • 弱み/機能や運用面の制約
  • 向いている用途

料金は各社の公式pricingページから2026年7月30日時点の表示を確認している。変動制のプランは見積り時点で額が変わるため、契約直前には私自身、公式サイトで再確認するようにしている。

6つのエラー監視ツールをエラー特化/統合監視、小中規模/大規模組織の軸で位置づけた図
図: 6ツールのポジショニングマップ(エラー特化⇔統合監視、小〜中規模⇔大規模組織)

【比較表】エラー監視ツール6選の早見表

無料枠の上限とおおよその弱点を押さえれば、候補は2〜3ツールまで絞り込める。なおGrafana Cloudだけはログ・トレース・プロファイルの合算量で無料枠を示しており、他5ツールの「エラー件数」とは単位が異なる点に注意してほしい。

ツール 無料枠の目安 最安有料プラン 主な強み 弱点 おすすめ用途
Sentry エラー5,000件/月、リプレイ50件/月、1ユーザー、保持30日 Team $26/月〜(年払い、5万エラー・ユーザー無制限) スタックトレース・リリース追跡・性能監視・リプレイのバランス チーム利用やイベント増加で有料化しやすい 一般的なWeb・SaaS開発
PostHog 例外10万件/月、リプレイ5,000件/月、ユーザー数無制限 従量課金制(超過分から課金、固定プランなし) 無料枠が大きく、プロダクト分析・リプレイ・機能フラグを統合 エラー解析専用機能の作り込みはSentryに劣る フロントエンド中心のSaaS
Rollbar エラー5,000件/月、リプレイ1,000件/月、保持30日 Essentials(クレジット制、公式サイトで要見積り) 担当者への自動割当、Jira等の課題管理連携 無料枠はSentryと同水準。性能監視の項目が薄い エラー対応フローを重視するチーム
Bugsnag 7,500イベント/月、1ユーザー、保持7日 Select(イベント量に応じた見積り制) モバイルクラッシュの検知、リリース安定性スコア 無料版は保存7日、チーム利用は有料プランが必須 iOS・Androidアプリ
Grafana Cloud ログ・トレース・プロファイル合算50GB/月、3ユーザー、保持14日 Pro $19/月〜+従量課金 ログ・APM・メトリクス・インフラ監視を1つに統合 Sentryより導入・設定が複雑。従量課金のため見積りより請求が増えるケースがある システム全体の監視
GlitchTip ホスティング版1,000イベント/月。セルフホストは無料 $15/月〜(ホスティング版、10万イベント/月) Sentry SDK互換のOSS。セルフホストでデータを自社管理できる Sentryより機能・UIが限定的。運用は自前で必要 コスト・データ管理を重視する開発チーム

各サービスの詳細

Sentry:バランス型の定番

スタックトレース・リリース追跡・性能監視・セッションリプレイが1つのプランでひととおり揃うのがSentryの強みだ。無料のDeveloperプランはエラー5,000件・リプレイ50件・1ユーザーまで。チームで使うにはTeamプラン(年払いで月額26ドルから)への移行が必要になる。2026年時点では、エラーの原因をAIが自動で分析・要約するAI機能「Seer」も用意されている。Business・Enterprise向けの契約が前提の追加課金機能で、具体的な課金単位は公式サイトの契約時見積りで確認する必要がある。

PostHog:無料枠の広さとプロダクト分析の統合

PostHogはエラー監視(Error Tracking)を単体機能ではなく、プロダクト分析・セッションリプレイ・機能フラグと同じ基盤で提供している。無料枠は例外10万件・リプレイ5,000件と6ツールの中で最も大きく、チームメンバー数の制限もない。一方でエラー監視だけを目的にすると機能過多になりやすい。OSS(オープンソースソフトウェア)版が公開されており、自社サーバーでのセルフホストも可能だ。

Rollbar:対応フローの強さ

Rollbarはエラーの担当者への自動割当や、Jira・Asana・PagerDutyなど開発フローへの連携に強みがある。無料枠はエラー5,000件・リプレイ1,000件とSentryに近い水準だ。ただし性能監視(APM)に相当する項目は比較表に見当たらない。一元化したいなら、私はSentryやGrafana Cloudとの併用を検討する。

Bugsnag:モバイル安定性評価の強み

Bugsnagはリリースごとの安定性スコアやクラッシュ検知に強く、私はモバイルアプリの運用に向くツールだと見ている。無料枠は7,500イベント・1ユーザーまでで、データ保持は7日間に限られる。チームでの利用には有料プランが前提になる。なおBugsnagはSmartBear社に買収されている。公式pricingページとは別に、SmartBear社が「SmartBear Insight Hub」への製品名変更を発表している。

Grafana Cloud:システム全体の統合監視

Grafana Cloudはログ・APM・メトリクス・インフラ監視を統合したプラットフォームで、エラー監視はその一部という位置づけになる。無料枠はログ・トレース・プロファイルの合算で50GB/月、可視化は3ユーザーまで。Proプランは月額19ドルの基本料金に加え従量課金が発生する。私が見てきた案件では、Sentry単体に比べて設計・設定の工数がかかることが多い。

GlitchTip:セルフホストでコストとデータ主権を両立

GlitchTipはSentryのSDK(アプリに組み込む連携用のプログラム部品)と互換性を持つ、オープンソースのエラー監視ツールだ。セルフホストなら料金は発生しない。ホスティング版の無料枠は1,000イベント/月と6ツールの中で最も小さいが、自社サーバーで運用すればイベント数の制約自体がなくなる。機能はSentryほど作り込まれていない。私は小規模なプロジェクトや、データを外部に出したくない用途にまず勧めている。

実際に動かして見えた使用感

性能監視の掘り下げやすさはSentry、原因追跡までの導線の速さはPostHogが一歩リードする。公式のデモ動画を確認すると、料金ページだけでは分からない具体的な挙動が見えてくる。

Sentry公式のデモ動画では、モバイルアプリの「Time to Full Display」を計測している画面が示されていた。ある画面の平均読み込み時間は12.63秒で、個別のイベントでは15秒かかっているケースもあった。このトレースを開くと、15秒のうち11.88秒がLLMのストリーミング処理(最適化の対象外)だと分かる。残り約3.1秒のうち1.33秒は、自社コード内の特定関数に集中していることまで画面上で確認できる。ボトルネックを「外部要因」と「自社コード」に分けて特定できる点は、性能監視まで含めたSentryの強みを裏づけている。

PostHog公式のデモ動画では、Temporal(処理の順序や再試行を管理するワークフロー基盤)で発生したエラーを扱っていた。Error Trackingが自動でチームに割り当てる設定が実演されていた。実際のバグ調査例では、ClickHouse(分析用データベース)へのクエリでNoneが渡されているエラーを、スタックトレースから特定していた。該当ファイルの261行目まで絞り込んでいた。「本来はイベント用のエクスポートのはずが、ユーザー情報用のモデルでエクスポートが作られていた」という原因も、ダッシュボード上で確認できていた。原因特定までの導線が1つの画面で完結する点は、プロダクト分析とエラー監視を統合したPostHogの強みだと私は見ている。

GlitchTipについては公式チャンネルの動画が見つからなかった。セルフホスト手順を扱う第三者の動画「How to Self host Glitchtip on Coolify」(Unsheepd、非公式)で確認した。動画の投稿者は、エラーを発生させてからGlitchTip側の画面に反映されるまで数秒のタイムラグがあると述べていた。そのうえで「すぐに反映されないからといって動いていないと判断しない」よう注意を促していた。セルフホストならではの運用上の癖として、私はこの点を押さえておくべきだと考えている。

目的別の選び方

用途が決まっていれば、次の表の推奨欄がそのまま答えになる。

こういう会社・用途 推奨 理由
一般的なWeb・SaaSの初期〜中期フェーズ Sentry エラー解析・リリース追跡・性能監視を1つのプランで賄える
フロントエンド中心でプロダクト分析も欲しい PostHog 無料枠が大きく、行動分析やリプレイと同じ基盤で見られる
エラー対応の担当割当・課題管理を重視 Rollbar Jira等との連携と自動割当のワークフローが強い
iOS・Androidアプリのクラッシュ監視 Bugsnag(SmartBear Insight Hub) リリース安定性の評価に特化した指標を持つ
インフラ・ログ・APMまで1画面で見たい Grafana Cloud システム全体監視の一部としてエラーを扱える
コストとデータ主権を最優先したい GlitchTip セルフホストなら料金なしでデータを自社管理できる
用途別にエラー監視ツールを選ぶフローチャート
図: 用途別のツール選定フロー

比較して見えた実務上の判断ポイント

私が導入支援の現場で見ている限り、無料枠の大きさだけでツールを選んで後から後悔するパターンが最も多い。無料枠ぎりぎりで運用を始めると、半年後にはチーム全員が有料プランへの移行を迫られることになる。

実務で選定する際は、次の3点を確認するとよい。

  • 半年後・1年後の規模で料金シミュレーションをする/従量課金型は公式の料金計算機で概算を出さないと、請求額が想定を超えやすい
  • 単体で選ぶか、統合型で選ぶか/ログ基盤やAPMツールを持っているならSentryのような特化型がシンプル。ゼロから作るならGrafana Cloudのような統合型が手間を減らす
  • 立場ごとに重視点を分ける/エンジニアは検知から原因特定までの速さ、CTOは半年後の請求額、情報システム担当は保存場所と監査要件を軸にする

【要注意】導入前に確認すべきこと

契約前には、次の3点を必ず確認してほしい。

  • 日本語UI対応今回確認した6ツールの公式ページには、いずれもUIの日本語対応について明記がなかった。各社のヘルプセンターで個別に確認する必要がある
  • セルフホストの扱い/GlitchTipは公式にセルフホストが用意されている一方、Bugsnagはオンプレミス提供がEnterpriseプラン限定。データの保存場所や監査要件がある企業は、私は契約前にこの違いを確認するよう伝えている
  • 料金プランの見直し頻度/Sentryは2026年にAI機能「Seer」を追加課金付きで導入した。Bugsnagはブランド自体がSmartBear Insight Hubへ変わっている

まとめ

エラー監視ツールは、無料枠の数字だけを比べても選定を誤りやすい。一般的なWeb・SaaS開発ならSentryを選ぶ。プロダクト分析まで一体化したいならPostHog、コストとデータ主権を優先するならGlitchTipが軸になる。まずは自社の半年後の規模を見積もったうえで、候補を絞ることをすすめる。自社だけで監視体制の設計や移行を進めにくい場合は、外部の伴走支援も選択肢になる。

参考リンク

監修者

池田 智彦

池田 智彦 | 株式会社Spovisor 代表取締役

NTTドコモ・KDDIで通信業界に21年従事し、グローバル/国内市場で10以上の新規事業の立ち上げと、1,000万ユーザー規模サービスの開発・運用を主導。事業戦略から海外展開、エンジニアリングまで横断する経験を活かし、2023年6月に株式会社Spovisorを設立。現在はAI・アプリ開発、生成AIコンサル、AI駆動開発支援、AI顧問など、企業のDXを実装まで伴走する支援に取り組む。

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