社内データをRAGで活用する方法5選を比較

社内データRAG化の方法5選を比較するアイキャッチ画像 生成AI

社内データをRAG(検索した文書をもとに生成AIに回答させる仕組み)で活用する方法は、大きく5つに分かれます。既存のGoogle WorkspaceやMicrosoft 365で足りる会社もあれば、自前構築が必要な会社もあります。本記事では、各社の公式一次情報にもとづいて5つの方法を料金・仕組み・アクセス権の扱いで比較しました。読めば、自社の規模と用途に合った方法を短時間で選べるようになります。

この記事の対象読者:生成AIで社内データを活用したいと考えている経営者・情報システム担当・DX推進担当の方

比較する5つの方法と選定基準

比較の軸は、①データソースとの相性、②料金、③アクセス権の扱い、④カスタマイズ性の4つです。この4つが、どの方法が自社に向くかを大きく左右します。

社内データをRAG化する方法は、次の5つに整理できます。

  • Google Workspace系/Gemini EnterpriseやNotebookLM EnterpriseでGoogle Drive文書を検索する方法
  • Microsoft 365 Copilot/SharePointやOneDriveのファイルをCopilotの回答生成の根拠にする方法
  • ChatGPT Enterprise・Claude Projects/プロジェクト単位でファイルをアップロードして参照させる方法
  • Notion AI Enterprise Search/Notionのワークスペースと連携アプリを横断検索する方法
  • 自前構築・軽量アプローチ/Supabase+pgvectorでのベクトル検索基盤や、MCP経由でGoogle Driveを直接検索させる方法

①〜④のどれを重視するかは、既に使っているツールと、どこまで検索精度を作り込みたいかで決まります。次の章で、5つの方法を横断比較します。

5つのRAG活用方法を手軽さとカスタマイズ性の2軸で整理した図
図: 5つの方法を「手軽さ」と「カスタマイズ性」の2軸で整理しました。

【比較表】5つの方法の横断比較

手軽さを取るならGoogle WorkspaceかMicrosoft 365の標準機能、検索精度を作り込みたいなら自前構築が候補になります。詳細は次の表のとおりです。

方法 主なデータソース アクセス権の扱い 向いている規模
Google Workspace系 Google Drive、Docs、Slides、PDF等 IAMロールで管理者・利用者を個別付与 既にGoogle Workspaceを使う中小〜大企業
Microsoft 365 Copilot SharePoint、OneDrive、Dataverse Purviewの感度ラベル・ユーザー権限をそのまま反映 既にMicrosoft 365を使う中堅〜大企業
ChatGPT Enterprise・Claude Projects プロジェクトへの手動アップロードファイル プロジェクト単位で共有範囲を設定 特定プロジェクト・小規模チーム
Notion AI Enterprise Search Notionワークスペース、Slack、Google Drive連携 Notionのワークスペース権限を継承 Notion中心でナレッジ管理する会社
自前構築・軽量アプローチ 任意(DB、社内文書、API経由のデータ) 自社の実装次第。作り込みが必要 開発チームを持つ企業、検索精度を作り込みたい企業

各方法の詳細

Google Workspace系(Gemini Enterprise・NotebookLM Enterprise)

Gemini Enterpriseは、ユーザーがアクセス権を持つGoogle DriveやSharePoint上のコンテンツを横断検索します。その検索結果をもとに、エージェントを実行できます。管理者はIAMロール(Google Cloudのユーザー権限管理の仕組み)でアクセス範囲を管理します。元のファイル権限をそのまま検索範囲に反映できるのが特徴です。

NotebookLM Enterpriseは、ノートブックに追加したソースだけを根拠に回答を生成します。対応形式はGoogle Docs・Slides・PDF・音声・画像・DOCX・PPTX・XLSXなど幅広いです。上限は、ノートブックが1ユーザーあたり500個です。ソースは1ノートブックあたり300個、1ソースあたり500MBまたは50万語までです。ライセンスは最小15、最大5,000まで購入できます。それを超える場合は個別に相談する形です。導入の流れは、IDプロバイダーの設定、プロジェクト作成、ライセンス発行、IAMロール付与、ライセンス割り当ての順です。

無料版のNotebookLMとEnterprise版はUIがほぼ同じで、見分けが付きにくいという難点があります。混同を防ぐには、管理者がWorkspace管理コンソールで無料版を無効化しておくのが確実です。

Microsoft 365 Copilot(SharePoint・OneDriveのグラウンディング)

M365 Copilotは、ユーザーがアクセス許可を持つコンテンツだけを参照・要約します。Microsoft Purview(Microsoftの情報保護・ガバナンス管理サービス)の感度ラベルや暗号化と連携しています。Copilot自体がユーザーの権限を変更することはありません。感度ラベル付きで暗号化されたファイルは、EXTRACTとVIEWの両方の権限が必要です。ラベルなしでAzure RMS(Microsoftのファイル暗号化・権限管理サービス)により暗号化されたファイルは、どちらか一方の権限で読み込めます。権限が足りないファイルは、エージェントが参照できません。

カスタムエージェントを作るCopilot Studioでは、ナレッジソースを複数設定できます。対象は公開ウェブサイト・アップロード文書・SharePoint・Dataverseです。Dataverseは、Microsoftのビジネスデータ管理サービスです。他にコネクタ経由のエンタープライズデータも対象になります。Semantic Index(テナント全体を意味検索の対象にする機能)を有効にすると、対応ファイルの容量が広がります。SharePointとコネクタ経由のファイルは200MBまで、PDF・PPTX・DOCXは最大512MBまで検索対象にできます。利用にはCopilot add-onという追加ライセンスが必要です。既存のBusiness Standard・Premium・E3・E5等のライセンスが前提になります。

ChatGPT Enterprise・Claude Projects(プロジェクト単位のファイル参照)

ChatGPTのプロジェクト機能は、プロジェクトごとにファイルをアップロードして参照させる方式です。ファイル数の上限はプランによって異なり、Plusは20ファイル、Business以上は40ファイルまでプロジェクトに追加できます。

Claude Projectsは、プロジェクトの知識量がコンテキストの上限に近づくと自動でRAGモードが有効になります。有料プランのみですが、参照可能な知識量が最大10倍に拡張されます。GoogleドライブなどのGoogle Workspaceサービスとの接続機能も用意されています。MCP(AIが外部データに接続するための共通規格)という仕組みを使います。詳細はMCPとAPIは何が違うのかで解説しています。

Notion AI Enterprise Search

Notion AIのEnterprise Searchは、Notionのワークスペース内だけでなく連携アプリまで横断して検索できます。対象はSlackやGoogle Driveなどです。基本的なAI機能はFree・Plus・Businessプランでも試用できます。ただし、Enterprise Searchやカスタムエージェントの本格利用にはBusiness以上のプランが必要です。カスタムエージェントは試用後、1,000クレジットあたり10ドルの従量課金になります。Enterpriseプランではデータをゼロ保持するオプションがあり、それ以外のプランはデータを30日間保持します。

自前構築・軽量アプローチ(Supabase+pgvector、Claude Code×MCP)

既存のSaaSでは検索精度やコストを作り込めない場合、Supabase+pgvectorでベクトル検索基盤を自前で構築する方法があります。pgvectorは、PostgreSQL上でベクトル検索を行えるようにする拡張機能です。柔軟にRAGを組み込みたい開発者向けには、file_search機能でベクトルストアを構築する方法もあります。OpenAIのResponses API(モデルを呼び出す開発者向けAPI)に含まれる機能です。弊社でも実際にこの構成で社内RAGを構築した経験があります。OpenAIのtext-embedding-3-smallでドキュメントをベクトル化しました。Edge Function(サーバーを管理せずに実行できる処理単位)経由で、登録・検索のAPIを実装しました。Supabaseの無料プランの範囲に収まり、Embeddingのコストは月数十円程度に抑えられています。

この方法で精度を左右するのは、検索エンジンの種類よりも文書の切り方です。AIエージェント向け検索API選択ガイドでも整理したとおり、検索方式ごとに向き不向きがあります。文書を200〜400トークン程度のまとまりに区切り、タイトルなどのメタデータを付与すると、検索精度が上がります。

ベクトルDBを用意する余力がない場合は、Claude Code経由でGoogle DriveをMCP接続する方法も選択肢になります。その場でファイルを検索・要約させる軽量な方法です。ベクトル化や再インデックスの仕組みを持たない分、大量の文書を横断検索する精度では専用基盤に劣ります。ただし、構築の手間はほとんどかかりません。

目的別の選び方

既に使っているツールを起点に考えると、選び方はシンプルになります。

こういう会社・用途 推奨 理由
既にGoogle Workspace中心 Gemini Enterprise/NotebookLM Enterprise 追加ツールが不要で、権限管理をそのまま引き継げます
既にMicrosoft 365中心 Microsoft 365 Copilot SharePointの権限をそのままグラウンディングに使えます
特定プロジェクトだけ小さく試したい ChatGPT Enterprise/Claude Projects 追加インフラなしでプロジェクト単位に始められます
Notionでナレッジ管理している Notion AI Enterprise Search ドキュメントの置き場を変えずに検索を追加できます
開発チームがいて検索精度を作り込みたい Supabase+pgvector自前構築 チャンク設計や検索アルゴリズムを自由に調整できます

比較で見えた実務上の判断ポイント

5つの方法を比較すると、検索の仕組みそのものより、アクセス権限の継承とデータの鮮度維持の方が実務上の負担になることが分かります。

Google Workspace系もMicrosoft 365 Copilotも、元のファイルの権限をそのまま検索範囲に反映する設計です。これに対して、プロジェクト単位でファイルをアップロードする方式や自前構築は、誰がどのファイルを見られるかを別途設計する必要があります。権限設計を後回しにすると、退職者が閲覧できない設定になっていたファイルが検索結果に混じる、といった事故につながりかねません。

RAGは一度構築して終わりではありません。文書が更新されるたびに再インデックスする仕組みがないと、古い規程や終了したキャンペーンの内容を回答し続けることになります。自前構築を選ぶ場合は、検索精度のチューニングよりも先に、この更新の仕組みを設計してください。

ここからは私の解釈です。今後は、データの置き場を持つプラットフォームに、RAGが標準機能として取り込まれる流れが強まると見ています。Google Workspace・Microsoft 365・Notionが好例です。データの置き場を変えずに検索機能だけを足せる分、自前構築より導入のハードルが低いためです。

【要注意】導入前に確認すべきこと

どの方法を選ぶ場合も、次の点は事前に確認してください。確認を怠ると、コストや情報漏洩のリスクとして後から表面化します。

  • アクセス権限の継承/元ファイルの権限が、そのままAIの検索結果に反映されるかどうかです。反映されない方式なら、権限テーブルを別途用意して検索前にフィルタする設計が必要です。
  • データの保持期間・学習利用の有無/サービスごとにポリシーが異なります。機密情報を扱う場合は、ゼロ保持オプションがあるプランを選ぶか、契約前にベンダーへ確認してください。
  • 生成AIへの機密情報投入のガバナンス/誰がどの文書をアップロードしてよいかという社内ルールがないと、個人情報や契約書がそのまま検索対象になりかねません。導入前に対象文書の範囲を決めておくと安全です。
  • ベンダーロックイン/自前構築はデータのエクスポート性が高い一方、運用の負荷が上がります。SaaSは運用が楽な一方、乗り換え時にデータの移行方法を確認しておく必要があります。

どの方法も、社内に生成AI活用に慣れた担当者が1人もいない場合は、いきなりの導入が向きません。まずはNotebookLM Enterpriseなど無料範囲で試せるツールで、検索結果の精度を確認するところから始めてください。

本記事の料金・上限値は2026年9月時点の公式情報にもとづきます。仕様は変更される可能性があるため、契約前に必ず公式サイトで最新情報を確認してください。

RAG導入前に確認すべき4つのチェックポイントを示した図
図: 導入前に確認すべき4つのチェックポイントです。

まとめ

最初の一歩は、既にあるツールで無料範囲から試すことです。社内データをRAGで活用する方法は、既に使っているツールを起点に選ぶのが最短です。Google Workspace中心ならGemini EnterpriseやNotebookLM Enterpriseが第一候補です。Microsoft 365中心ならCopilot、Notion中心ならEnterprise Searchが第一候補になります。開発チームがいて検索精度やコストを作り込みたい場合は、Supabase+pgvectorの自前構築が選択肢です。どの方法でも、アクセス権限の継承とデータ更新の仕組みを先に設計することが、導入後のトラブルを防ぎます。自社だけで進めにくい場合は、外部の伴走支援も選択肢になります。

参考リンク

監修者

池田 智彦

池田 智彦 | 株式会社Spovisor 代表取締役

NTTドコモ・KDDIで通信業界に21年従事し、グローバル/国内市場で10以上の新規事業の立ち上げと、1,000万ユーザー規模サービスの開発・運用を主導。事業戦略から海外展開、エンジニアリングまで横断する経験を活かし、2023年6月に株式会社Spovisorを設立。現在はAI・アプリ開発、生成AIコンサル、AI駆動開発支援、AI顧問など、企業のDXを実装まで伴走する支援に取り組む。

Spovisor公式サイトお問い合わせ

生成AI/AIエージェントを「成果」に変える、Spovisorの伴走支援

Spovisor

株式会社Spovisorは、生成AI・AIエージェントを「使ってみた」で終わらせず、業務やプロダクトに組み込んで成果を出すところまで伴走する実装パートナーです。

支援領域内容
生成AI組み込みアプリ開発Claude/ChatGPT/AIエージェントを組み込んだ業務アプリや自社プロダクトの設計から実装まで支援
生成AI導入コンサル/AI顧問経営課題や業務プロセスから導入ポイントを設計し、本番運用まで伴走
AI駆動開発支援Claude Code/Codexを使った開発生産性向上を現場へ定着

無料相談・お問い合わせはこちら